富山の特産品・産業
季節だより 春夏秋冬

秋号

果実を皮切りに、実りの秋がやってくる

富山平野を南北に貫く呉羽丘陵。富山市街と立山連峰を一望する風光明媚な丘陵地では、お盆が明けた頃から、大きく実った梨の収穫作業がはじまる。

はじめの頃に収穫される品種は、糖度が高く果肉が柔らかい「幸水」。残暑が厳しい折に、冷蔵庫で冷やした幸水を口に含むと、みずみずしい甘さが乾いた体にしみ込んで、暑かった夏を忘れさせてくれる。梨は、富山に秋の訪れを告げる風物詩だ。

呉羽の梨

「幸水」に続いて、ほどよい酸味を含む品種「豊水」が収穫時期を迎える。梨の収穫は、9月下旬まで。梨の出荷が終わる頃には、周囲はすっかり秋景色に変わっている。

呉羽丘陵の南、富山市西部にある丘陵地では、同じ頃にぶどうの収穫期を迎える。ぶどう園は観光農園として解放され、ぶどう狩りを楽しみに多くの人々が訪れる。ワイナリーを備えたぶどう園では、地元産ワインでも味わえる。その頃、富山市南部の大沢野地区では、赤々とした甘い果肉のイチジクが収穫される。一方、富山湾では紅ズワイガニ漁が解禁される。秋の訪れとともに、里だけでなく海も、紅(赤)色の収穫で活気づく。

実りの報せは、やがて穀物へと移る。富山県は耕作地全体の9割以上を水田が占める稲作王国。主力品種はコシヒカリで、収穫は例年9月中旬ころからはじまる。富山産コシヒカリは、日本穀物検定協会が主催する「全国米の食味ランキング」において、ここ数年「A」ランク以上を維持し、その評価を確かなものにしている。

富山米
富山の酒

また、中生品種であるコシヒカリより、収穫期が10日ほど早い早生品種「てんたかく」が好評だ。これは、猛暑でも品質の低下が少ない品種として県が独自に開発したもので、平成15年から作付面積が徐々に増加し、県産うるち米全体の約1割(平成20年)を占めるようになった。
地元産新米のトップバッターとして食卓にいち早く届けられ、コシヒカリに比べて価格も手頃な割に食味もいいとあって、評判は上々だ。

また最近は、晩生品種「てんこもり」が食卓に出回りはじめた。これも県が開発したオリジナル品種で、コシヒカリより7日ほど収穫が遅い。これらの新品種の登場により、地元で穫れた「新米」の楽しみ方が増えた。

米の収穫が終わる頃、酒蔵は新酒の仕込み作業に向けて動き始める。富山の地酒は、酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)の使用割合が8割を超えており、全国平均の約2割をはるかに上回る。おいしい酒には、おいしい水と米が欠かせない。名水に恵まれた富山は、酒米へのこだわりもひときわ強いというわけだ。

周囲を3000m級の立山連峰と日本海に囲まれた富山。恵まれた風土と美味しい水が育む豊かな実りは、秋の収穫を経て、いよいよ美味しさの極みを迎える。

参考資料
野菜の時代(河畑達雄著、桂書房発行)
富山県米麦改良協会(http://toyama-beibaku.com/
知られざる北陸の食(https://shizenjin.net/hokuriku_food/

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