笹を敷いた曲げわっぱにシャリを入れ、薄く切った鱒を乗せて押し寿司にしたますの寿しは、富山を代表する故郷の味だ。
その昔、神通川を遡上するサクラマスを釣り上げ、押し寿司をつくったのがはじまりと伝えられる。歴史の文献をひも解けば、江戸享保年間に富山3代藩主前田利興(としおき)の家臣が、時の将軍徳川吉宗にますの寿しを献上したと記録されており、約300年前にすでに食されていたことがわかる。
古くはおふくろの味として各家庭で受け継がれてきたが、現在は専門店でつくられるものがほとんど。富山市内には15軒ほどの業者あり、鱒の切り方、塩加減、重しの掛け方など、各店によって特長がある。